前回の続きです
これ以上の回復が望めなくなり、食べることも難しくなったアルツハイマー型認知症
のAさんの、看取り介護のカンファレンスを行い
看取りケアプランが作成されました。
・覚醒状態が良い時に出来るだけお好きなものを口にして頂く
・褥瘡が出来ないように体位変換や清拭などで皮膚の状態を観察する
・部屋にこもりきりにならず、フロアで皆さんと過ごし時間を持つ
・お好きな音楽を聴いていただく
・家族様にはいつでもお部屋に来て一緒に過ごして頂けるようにする
・容体に変化があれば夜間でも看護師に連絡し、主治医とも連携を取り
家族にも連絡する
等の取り決めを書面化して、スタッフ全員で支援に入りました。
ご主人が「うどんが好きで、よく「どん兵衛」を食べてました、と言われていたので
小カップのどん兵衛を持ってきてもらい、フロアのスタッフが麺を柔らかく煮て
細かく刻み、お揚げはミキサーにかけ、うどんにかけて食べてもらいました。
ほんの数口でしたが、食べることができました。
電話で「食べて頂けましたよ!」と報告しましたら、喜ばれ、
次は「コーラ」が好きでしたわ!と、缶のコーラも持ってこられ、
それも少しだけ飲んで頂けました。
栄養や水分補給の意味では、もうそれで補える状態ではありませんが、
以前好きだったものを少しでも味わってもらうのが目的です。
高齢になって食事が喉を通らなくなっても、お好きな物だけは食べられる
という方は多いです。ほとんどの方が甘いものや、味の濃いものは、最後まで
割と食べられるようです。
アイスクリームはどなたも最後の方まで好んで食べられることが多いです。
音楽がお好きで「美空ひばり」が好きだったと聞いて
「美空ひばり」のCDをお部屋でかけて聴いてもらいました。
看取り期に入った方がおられるときの夜勤者は大変です。
何度も様子を見に居室を訪問し、体温や血圧測定し、状態がおかしければ
オンコール担当の看護師に連絡します。
Aさんの場合も何度も呼吸状態が悪く痰がらみになった時は、夜間でも
看護師が吸引処置に訪れました。
いよいよ数日か、、と思われたころに、関東に住んでおられた息子様も
帰って来られ、Aさんのお部屋に泊まり込み。
その翌日の夜間、息子様が見守るなかでお亡くなりになりました。
息子さんが帰ってくるのを待っておられたのかな?間に合って良かったです。
翌朝、葬儀社がお迎えに来る前にお別れ会をしました。
一緒に暮らしていた同じフロアの入居者さんにも、ちゃんと説明し
一人ずつお花を手向けてお別れして頂きました。
今までいた施設ではたいがいお亡くなりになったら、皆に隠すようにして
ひっそりと出ていかれることが多かったのですが、ここでは皆でちゃんと
お別れをします。それが良いのかどうかはわかりませんが、
それによって混乱される方はいませんでした。
担当フロアのスタッフと看護師さんは本当に大変だったと思いますが、よく
頑張ってくれました。
施設長が葬儀に参加しましたが、その時に喪主であるご主人の挨拶のなかで
「認知症を患った妻の介護を一生懸命にして下さった〇〇施設の職員の皆様には
本当に感謝してもしきれません。お礼が言える状態ではなかったかもしれませんが
本人はしっかりとわかったいたと思います。総理大臣よりも大変なお仕事だと
思っています。」とのとてもありがたいお言葉を頂戴した。
との報告を受けました。
そして施設内で「看取りの振り返り」というカンファレンスを開き
対応したスタッフや看護師が集まり、良かった点、工夫した点、悔やまれた点
等話し合い、今後の介護に生かします。
Aさんを思い返しながら、涙の話し合いになりましたが、家族にも
感謝されるよい看取りが出来たという達成感も味わえたと思います。
数日ゆっくり寝ることも出来なかった看護師は皆に拍手でねぎらってもらい
ますます涙涙でした・・・
Aさんのご冥福をお祈りします。