ほっしーのおひとり様を楽しむブログ

おひとり様でも楽しく元気に! ひとりでも楽しめることや、家族のこと、介護職の経験談など、思うことを何でも書いています

介護士のつぶやき(6)音楽の力

今 コロナウイルスで外出自粛をしている人や、治療の最前線で頑張っている医療従事

者に向けて、音楽で応援や癒しを届けようと、いろいろなミュージシャンがネットで

音楽を発信している。

 

音楽を聴いたところで、なにか変わることはないけれど、一時の癒しにはなるし、人の

ために何かを発信したいとの、活動は素晴らしいことだと思う。

 

たかが音楽  されど音楽♬  

 

音楽の素晴らしさは、介護施設での仕事のなかでも何度も体験している。

 

趣味のギターを使って、音楽レクリエーションを何度もしてきた。

 

高齢者の方が若い頃に聴いた歌を、ギター伴奏して一緒に歌うのだが、

普段ご飯を食べた後も「まだ食べてない!」と、、すぐ忘れる認知症の方でも、昔流行

った歌謡曲や唱歌はよく覚えておられ、歌詞カードを見なくても、しっかり歌われる。

いつもはずっと下を向いて、表情のない方でも歌を聞いて、目が輝いたり、会話が出来

たりすることもある。

 

手がほとんど動かず、食事も全介助の方の前で、「幸せなら手をたたこう」を

賑やかに歌うと、不自由な手を一生懸命動かし、拍手しようとしてくれた時は涙がで

た。

 

特別養護老人ホームで働いていた時は「クラブ活動」というものがあり、「折り紙俱楽

部「「絵画俱楽部」などあったが、参加できる人は、ほんとに僅かだった。

 

それで私は副施設長に提案してみた。

ギター伴奏で皆で歌う「懐メロ歌おう会」してみませんか?と

歌ならだれでも参加できる。歌わなくても聴くだけでもいい。

 

即採用され、定期的に10人程づつ会議室に集まり開催した。

 

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歌詞コピーを配り「昭和歌謡」や「唱歌」を歌ってもらった。

「世界は二人のために」を歌ったときには、副施設長がすかさずハモリを入れてきて

ビックリ!感激

 

「懐かしい歌ばかりや~」と号泣する人。

 

握手を求めてくる人。

 

「またやってくださいね」と言ってくださる人。

 

「音楽療法」としても大成功だったと思う。

 

その後3回ほど開催したあと、この特養を退職した。

 

次に仕事をした「老人保健施設」でも、音楽の良さを痛感する、忘れられない体験があ

った。

 

老健でも毎日のレクリエーションの時間があるものの、ビデオを見たり体操をしたり、

塗り絵をしてもらったりと、そんなことの繰り返しだけだった。

特養より忙しく音楽をするなどの余裕もなく、ギターを弾く機会もなく過ごしていたの

だが、ある人のことがきっかけで「よしやろう!」と決意した。

 

男性利用者Tさん。

右片麻痺で失語症があるのでしゃべれないが、認知症もなくこちらの問いかけにうなず

いたり、首を横に振ったりして、コミュニケーションは可能。

そのTさん 4,5か月程前から誤嚥性肺炎で何度も熱が出て、回復しても食べたらま

た調子が悪くなり、絶食で点滴。。。

それの繰り返しでとうとう全く物を食べれなくなり、点滴で寝たきり状態がもう1か月

以上続いた。

もう 胃ろう造設しか手がないところまできたが、家族さんは胃ろうには同意されなかった。

点滴だけでずっと生きながらえることは不可能だ。

しだいにやせ衰えてきて いよいよ「看取りの方向で」との指示を受けた。

私も自分に置き換えたら胃ろう付けてまで生きようとは思わない。 

でも Tさんはまだ70歳前半、意識もあり認知症もないのに、と思ったらなんだか複

雑な思いだった。

 

奥様は毎日面会に来られるようになった。

わたしたちスタッフもできるだけ顔をだして話しかけたりするようにしたが、ずっと居

室に入ってることは出来ない。

 

奥様が来られた時にいろいろ話を伺うと Tさん音楽がお好き、、とのこと。 ギター

やピアノが好きで、習いかけてた時もあった、とのこと!

奥様に「どんな曲がお好きなのかな?」と聞いてみたら、クラッシックも好きだけど、

ユーミンとかも聴いてた」だって!!

「私もユーミン好きなんですよ^^<卒業写真>なんて知ってるかな?」と軽く歌って

みた♪

そしたらTさんが笑顔になり少し口が動いている〜!

奥様も「わあ 上手ですね」と褒めてくださった。

調子に乗って「じゃあ 今度ギター持ってくるから聴いてくださいねー」・・・・言っ

てしまった^^;

その後 娘さんが来られた時もリサーチすると、カラオケでは<異邦人>とか歌ってた

わ。とのこと。

 

いつかTさんの居室で音楽レクやろう〜と思っていましたが、なかなかレクできる機会

がなくTさんの容体も思わしくなく、数日たってしまったが、Tさんの調子が良いときに

主任に言ってみた

 

「今日午後私レク担当になると思うんでギター持ってきたんですけど・・」

「それで〜・・もし良かったら2,3曲でもいいからTさんの部屋でやりたいんです

が・・」と言ってみた。

「うん! いい考えや!やろう」と許可をもらえた。  

 

まず リビングで利用者さんを集めて始めた。

6曲 歌詞コピーを配り、懐かしい昭和歌謡曲をお話を交えながらギター伴奏で皆で歌った。

 

その後 Tさんの居室に移動。

歌の好きな利用者さん2人に一緒に入ってもらった。

その時には噂を聞きつけた看護師や相談員など、ギャラリーがいつの間にかふえていた

ー( ゚Д゚)

 

丁度奥様と娘さんも来られていて、ベット周りに数人集まった。

<卒業写真>と<異邦人> 心を込めて弾き語りした。

周りの方も口ずさんでくれた。

 

そして「今度は皆で歌いましょう〜」と歌詞コピーを渡して

<知床旅情>を皆で歌いはじめた。

奥様 娘さんにも「一緒に歌ってください」とコピーを渡していたが・・・

途中歌ってくれてるかな?と見ると・・・・

二人とも顔を覆って泣いてらっしゃるぅぅぅ〜〜!!!

それ見て私も泣けて来て途中歌えなくなりましたが、、頑張って最後まで歌えた。

 

あまり長いとTさんも疲れるので3曲で終わることにした。

 

「急にたくさんで押しかけてごめんなさい」

「また機会があったらやりますのでTさんそれまで元気で。待っててくださいねー」

 

Tさんが、左手を少しあげて応えてくれた。

酸素マスクをし、苦しい状態で頑張って手をゆっくり振ってくれた。

嬉しくておもわずTさんの手を握りしめた。

 

 

 

それから3日後Tさんは、亡くなられた。

 

間に合って良かった。思い切ってやって良かった。

 

高齢者はいつ急変するかわからない。「また今度ね」と言ってそれきり会えなくなっ

た経験も何度もしている。

 

「また今度」はないかもしれない。

介護は「一期一会」 明日この方はいないかもしれない。

そう思って悔いない介護をしなくてはならない。わすれられない出来事だった。

 

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